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コミュニケーションと環境教育

川嶋 直さん(公益社団法人日本環境教育フォーラム理事長・NPO法人自然体験推進協議会理事)

乾いた枝があれば、炎は自然に燃え上がる

 

ここで少し一般的な話をしようと思います。人前でお話をしたり、人に伝えるってどういうことかなあって考

えてみたいんですが、これもコミュニケーションのひとつなんですよね。

中国の古いことわざでこんなのがあるんです。「聞いたことは忘れる、見たことは後で思い出す。やったこと

はわかる。」でもね、「わかると出来るは大違い」っていうことがあってね、「発見することではじめて出来

る。」

これは学ぶ側から言ったらということですよね。僕は伝える側。そうなるとこれを全部ひっくり返さなきゃい

けないですね。つまり、残念ながら、「言ったことは忘れられる。」そういうもんです。「見せたことはちょ

っと思い出してもらえる。やらせたことはわかってもらえる。」結局、「学び手自らが発見したことがその人

の身につく」ってことです。伝えるってことは大変なことですね。言ったら伝わるんだったらそんなに苦労な

よ。だから、体験と発見が大事なんだっていう話なんですね。だから、言っただけじゃなかなか伝わらない。

もうちょっと厳しく言うとね、「言ったら伝わるは、言った側の傲慢」じゃないか。「僕らは言ったんですか

らね、あとは皆さんの問題。」そうじゃないでしょう。だから僕らは伝えるためにあらゆる工夫をするわけで

す。

 

教育、英語でエデュケーション。語源は、英語ではエデュース、エデュケアーとなるとラテン語なんですね。

どういう意味か。教え込むという事じゃなくて、引き出すことだっていうんですね。何を引き出すのかという

と、学び手の能力や個性、やる気や元気とかを引き出す。

皆さん反転授業って聞いたことがありますか?講義の授業はインターネットで自分の家で聴いてきなさい。教

室に来たら、質問したり、教えあったり、みんなで議論したり、新しいことを考えたり、教室はそういう時間

に使おう。一方的に先生が教えるのはネットで、それは自分でやりなさい。そういうことが各地で始まってい

ますね。日本以外ではずいぶん進んでいますね。日本では遅いか早いだけで、いずれそうなるでしょう。です

から、これからは先生に求められるものが違ってきますね。いかに参加させるかといった、ファシリテーショ

ン能力が先生方に求められるようになると思います。能力ややる気や元気を引き出すのがエディースだと。環

境教育は結局、「いいかこれは大事だぞ、試験に出るぞ。」というのではなく、「社長、うちの会社も何かや

りましょうよ。」という、そんな人を育てたいんです。個人の主体性を養う環境教育こそ、引き出す教育です。

 

アナトール・フランスという作家がこんなことを言っているんですね。「多くのことを教えることで、あなた

の虚栄心を満たそうとしてはいけません。好奇心を呼び起こせれば、それで良いのです。心を開けさえすれば

充分なのです。花火を散らしさえすれば、良いのです。乾いた枝があれば、炎は自然に燃え上がるのです。」

僕なんかも森の中に行って、鳥の名前や花の名前も多少は知っています。知っていることを知らない人に教え

たがる気持ちって起きてきますよね。だって、知りたいって言うんだもん。知りたいって言うんだから、知ら

せてあげるのがやっぱり礼儀だと思うし、その欲求に答えるんだから、悪いことをしているとは思わないです

よね。でも程度問題です。言えば言うほどわけわかんなくなってね。だからみんなが参加できて楽しいものを

やるようにしています。乾いた枝があるかどうかです。教育の基本ですね。僕にとって絶対必要だと思えばや

るわけですよね。僕と関係ないのに無理矢理憶えろ!って言われても「オレ頭悪いのかなあ、全然憶えられな

いよ」って。あなたは悪くないんですよ。

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