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環境の村エコセミナー2013 「地域に根ざした環境教育」

地域での環境保全活動に参加することが大切だといわれていますが、地域やコミュニティー自体が崩壊する中、地域の再生としてのコミュニティデザインが注目されるようになってきました。

そこで、もう一度地域の環境をベースに、4つのテーマについて学んでみます。

第3回「コミュニケーションと環境教育」

コミュニケーションと環境教育

川嶋 直さん(公益社団法人日本環境教育フォーラム理事長・NPO法人自然体験推進協議会理事)

環境教育で行われることは、自然が語りかける情報や言語をいかに通訳し伝えるか、そしてそれをどのように受け取るかという、お互いのコミュニケーションの作業です。相手に対して「言えば伝わる」を前提に環境問題を教え込むのではなく、自然に対する好奇心や感じ方をどのように引き出すかということ。それは自然環境に限らず、人や社会、世代間やコミュニティの外にいる人々といかにコミュニケートしていくかということも含まれるのではないのでしょうか。

「地域に根ざした環境教育」のシリーズの3回目は、日本の環境教育の第一人者である川嶋直さんをお招きし、「コミュニケーションと環境教育」というテーマで、環境教育の実際の現場と、KP法(紙芝居プレゼンテーション法)というプレゼンテーションの手法などについてお話しいただきました。

 

 

 

 

 

森の中での豊かな体験

 

こんばんは、川嶋です。僕が住んでいるのは山梨県の清里というところで、キープ協会という財団法人で30

間、環境教育の仕事をしています。

環境教育やインタープリテーションというは、自然の言葉を人に通訳する、自然の情報をみんなに伝えるとい

うことです。それからファシリテーションというのは、人と人が上手く絡まりながらみんなで考えましょうと

いう技術なんですね。

僕の仕事は1980〜2000年代の頃はインタープリテーションが中心だったんですけど、今はファシリテーション

やコミュニケーションという、部屋の中での研修にだんだん比率が変わってきました。数十人から百人ぐらい

のところで講演したり、ワークショップや研修会をやったり、大学院で授業をしたりしています。いろな団

体に関わっていて、キープ協会、日本環境教育フォーラム(JEEF)、日本環境教育学会、ESD10年世界の

祭典推進会議、自然体験動推進協議会(CONE、そし日能研というところの顧問をやっています。こん

なのが僕です。

 

 

私たちが森の中での環境教育を実践しているキープ協会(山梨県北杜市)の自然学校をご紹介します。清里は

東京から2~3時間の避暑地で、標高1400メートルのところにあるんです。富士山が見えます。宿泊施設やホ

テル、キャンプ場や酪農をやっている農場があって、他にもミュージアムがあったりします。キープ協会は戦

後間もなくできた財団で、僕が入った頃から環境教育の取り組みをしています。

 

具体的に、森の中でどんな活動をしているかということを紹介します。例えば3時間ぐらいのプログラムだっ

たら、まず五感を使って自然を感じるっていう時間があって、後半になってくると、感じたことを様々な形で

表現する。そして、学んだことを何人かで分かち合う時間を大事にして、最後にそこから学んだことを一般化

していく、そんなような順番です。時間の流れで言うと、つかみ、本体、まとめという感じですね。しっかり

導入をして、やりっ放しにしないでまとめをしようということです。

導入の部分は、目的の共有化とかアイスブレイクとかいろいろあるんですが、参加者にまずテーマを伝えます。

「今日のテーマは2つあります。まず自然をよく見てみよう。見方や視点を変えよう。この2つの事をやって、

何か違ったものが見えてくるかどうか意識しながら、森を3時間ぐらい一緒に歩いてみましょう。」こんな感

じで始めます。

そして、アイスブレイクでみんなの緊張をほぐした後はいよいよ本体です。

 

葉っぱジャンケン

拾った葉っぱでじゃんけんぽん。一人5枚ずつ葉っぱをとってきてください。2人でペアを作って、挨拶した

ら後ろ向きになって、じゃあ最初のお題は大きい葉っぱとか、一番小さい葉っぱとか決めてそれぞれ1枚選ん

で。「葉っぱジャンケン葉っぱっぱ」一番寂しい葉っぱとかね。こんなの主観ですから、勝ちも負けもないん

ですね。アイスブレイクみたいなもので。

 

めだまっち

これも大好き、丸いシールとペンを使って、木を顔に見立てて、めだまっち。顔に見えますか?シールの大き

さがいろいろで、楽しいでしょう?これをやっていると、森中顔だらけになって気持ち悪くなったりします。

 

森の映画館

余計なことをしないで、ただ寝転ぶだけでもいい。心地よい森の中でまどろむ午後。「お昼ご飯を食べて午後

1時に玄関前に集合、皆さん森の中に行きましょう」てな感じでね。入場券は大きな葉っぱです。森の中のち

ょっとした広場に着いたら、大きな葉っぱと引き替えに畳一枚分ぐらいのシートを渡して皆好きなところに寝

っ転がります。「ようこそ森の映画館にお越しくださいました。これから森の映画をはじめます。スクリーン

は皆さんのまぶたです。これからゆっくりとした音楽を流しますので、楽しい映画をどうぞ楽しんでください。

もし、途中で眠たくなったら遠慮せずにどうぞお休みください。それでは…。」1〜2分で森には寝息が響

出します。時間になったら、皆さんを集めて帰ってくるだけ。何もしないのが良いですね。

 

俳句ハイク

俳句ハイクっていいですね。字余り結構、季語気にしない、冬でも夏でも。子どもたちが良いですよね。年配

の方は絶妙な言葉を使いますよね。僕の役割は褒めることです。

 

ふりかえり

体験をふりかえって、それを一文字で表現してみる。今日の体験を漢字一文字で書くとするとどんな漢字を書

きますか。世の中にある漢字で表現しきれなかったら、新しい漢字を作ってみてもいいですよ。いろんな字を

考えますね。

 

 

僕は、この木は何という名前です、この鳥は何とかですという解説はほとんどしないんです。そういうことを

すると知っている人は楽しいけれども、知らない人はちっとも楽しくない。知っている人と僕とだけが盛り上

がってね。

大人の研修とかだったら、体験して感じた・考えたことを言語化したり、人間の言葉に落としたりします。

くつかの設問に答える形で言語化します。そして同じ体験をしたものどうしの小さなグループで、感じ方の

様性を学ぶんです。良い体験をしてもなかなかことが言葉にならない場合もあるわけですね。何人かで話を

していると誰かがとても上手い言葉を使ったりすることがあります。最後に僕らの方から、今日感じたことは

こういう風に一般化できるんじゃないかなとお話したりして終わりです。

 

大人の人と一緒にやる場合も多いです。それから、小・中・高校、大学生を対象にする場合もあります。年間、

主催で20本ぐらいのプログラムをするんですが、受けるグループの数は200団体ぐらいですから、一日に

3つも4つも重なることがあります。100人以上の大きな団体を受けるときもありますし、小さな団体を受

けるときもあります。短い2~3時間の体験もあるし、1週間お預かりするというのもあります。

企業研修で変わったところでは、神社本庁の研修をここ6年ぐらいやっていて、全国の神主さんを対象にした

研修を2泊3日ぐらいでやっています。日本中の神社の境内が環境教育の拠点になればということなんですよ

ね。神社は地域の環境教育の拠点になるはずだということで、そのお手伝いをしています。

公益財団法人キープ協会

1956年創設。Kiyosato Educational Experiment Project(清里教育実験計画)の頭文字をとり、キープ(KEEP) と名づけられた。創設者であるポール・ラッシュが掲げた「人類への奉仕」の4つの理念、「食糧」「保健」「信仰」「青年への希望」に、新たに「環境教育」「国際協力」を加え、自然と触れ合う体験型学習の推奨や環境保護活動を行っている。

葉っぱジャンケン(*)

めだまっち(*)

*写真はTECのプログラムです

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