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地域に根ざしたネイチャーセンターの活かし方・育て方
「ネイチャーセンターとコミュニティデザイン」京都ワークショップ

自然と共にしていくという覚悟

 

山口 それでは、あっという間に時間になりました。最後にお一人ずつコメントを頂ければと思います。ご質問の中に、「人と自然を分けないと言いながら、手の付いていない守られた自然と、人の手によって維持された自然とはまた違うだろう。どこまで人が関わって自然を維持し発展させていくのか」というものがありましたが、いかがでしょうか。

 

山本 幹彦 じゃあ一言だけ。自然と人とを分けないっていうことと、もうひとつは、この自然と一緒に、共にしていくんだっていう覚悟みたいなものがもう少し必要なんじゃないかなと思ってます。

 

山口 山崎さんにはこんな質問が来ています。「いろんな人たちが、思いはあっても傍観者になってしまうんじゃないか。いかにしていろんな人たちが積極的に関わっていけるのか。思いがあるはずの人たちを傍観者にしないためになにが必要だろうか。」

 

山崎 キャロリンさんもおっしゃってましたけど、やっぱり楽しいことがすごく大事だと思います。これは僕らがプロジェクトをやるときも必ず意識するようにしています。

たくさんの人に伝えていく部分は、フェイスブックやツイッターなどのツールがいっぱいある。だけどその中身の部分が、やっぱり楽しそうだなって思わないと、そこに行くとワクワクしてくるとかポジティブな話が出来るとかでないと、ネガティブで批判的な話ばかりでは、人はまた座って見てるだけになってしまうと思います。何が楽しいのか、希望があるのかっていうような話をしたり、楽しい場を作っていくようなことを僕らは心がけています。

 

山口 ブレントさんには、「シボロネイチャーセンターに来る人が、そこが自分の場所だという実感が駆り立てられていくためのプロセスがどうやって形成されるのか」という質問です。

 

ブレント 今ではたくさんの人たちが、インターネットなどの情報を通じて私たちの街にやって来ています。この街には美しい自然があり、巨大なショッピングセンターも町中の至る所に貼られた広告などもありません。一度訪れた人にとって、それは1時間ぐらいの短い時間であっても、そのことがなにかしらの影響を与えているはずです。帰り道には何かが変わっているんです。

私たちのコミュニティでは、人びとがそうやって少しずつ変わっていって、いろんなものにインスピレーションを受けながら、ここで暮らしていくことができるということを学んでいきます。そうやって、自然との距離を縮めているんですね。

 

山口 最後はお二人に共通の疑問を投げかけて終わりにしたいと思います。「何々をしなければならないと誰かが強い規制を作っていくことだけが、ネイチャーセンターのいい関係性を保つことではないだろう」という提案をいただきました。いいネイチャーセンターをつくっていくための課題と、同時にその中で何をどう評価していくのか、コメントをいただきたいと思います。

 

キャロリン いいネイチャーセンターの一番のしるしは、子どもたちが自然の中で楽しそうに遊んでいることです。シボロでは毎日その光景を目にします。自然の中で遊ぶことによって、子どもたちは健康で穏やかに成長していきます。ネイチャーセンターの活動を進めていくと毎日たくさんの問題が起こりますが、大切なのはあきらめないこと。かわりに人や自然とのつながりの中から貰うものはとても大きなものです。いきいきとした仕事をしていると、それらの障害はどんどん小さくなっていきます。ネイチャーセンターの活動は、あなたの中に何らかの変化をもたらしてくれます。

今日では、すべてのコミュニティが素晴らしい自然と子どもたちに恵まれているとは限りません。混沌とした都市の中で暮らす人たちもいます。しかし都会の中でも、野菜を育てたりしながら自然とつながることはできます。食べ物を育てることは自然とつながることと同じです。もしあなたが自然とつながっているのなら、その暮らしはスマートで、健康で、幸せなものになるでしょう。

 

梶田 私はネイチャーセンターが「人と自然」ではなくて、「人の自然」を思い出す場所になればいいんじゃないかと思っています。

29年前にここの住職になって森の教室を始めて、20年前に「森のセンター」ができました。そのころ法然院はずいぶん目立っていて、今でもまだちょっと目立っているんですが、私は普通のお寺になっていったらいいと思っています。20年経ってもなかなか変わっていかないのが日本だとも思いますが。ネイチャーセンターは敷居が高いっておっしゃいましたけど、お寺の敷居も高い。だけどちょっとずつ集える場所になって、ネイチャーセンターというかヒューマンセンターになって、アートセンターでもあり宗教センターでもあり、いろんなセンターとして、人が集って、学び、遊び、楽しんでいくところ。そういうところが日本中に増えていって、そのつながりの中で生きている私というものを思い出していく場所になったらうれしいです。

 

 

山口 今日はどうもありがとうございました。梶田真章さん、キャロリン・チップマン・エヴァンスさん、ブレント・エヴァンスさん、そして山崎亮さんでした。

* * *

 

ワークショップの後、エクスカーションとして、法然院の裏山で実施されている「観察の森」づくりのフィールド見学を行いました。皆さんがそれぞれ今日のお話しを通して感じたイメージを、実際に自然の中に出てみることで、改めて実感することができたのではないかと思います。

主催:NPO法人 当別エコロジカルコミュニティー

 協力:法然院

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