top of page
ネイチャーセンターと環境教育

山本 幹彦(当別エコロジカルコミュニティー代表)

自然と共に暮らす:コミュニティをデザインする

 

そんな中でこのネイチャーセンターの本に出会いました。シボロネイチャーセンターのゴールは、子どもたち

と一緒に自然を楽しむことなんだと。子ども向けの体験学習をベースに、一般向けのプログラムから専門的で

科学的な調査まで行っていて、その中で、企業や行政などいろんな人たちとパートナーシップを組んで活動し

ているんですね。

 

日本のNPOは阪神大震災の後にたくさん出来てきました。それまでは行政が作って、行政のニーズを達成する

ために活動する組織が多い中、震災をきっかけに市民の自発的な運動が起こってきた。同じようなことがネイ

チャーセンターでも出来ないだろうかと思っています。自然とふれあう施設はほとんどが行政の主導によって

行われてきましたが、NPO法人が出来てきたように、自分たちの意志で、自分たちの地域をもっと見直して、

自分たちの自然を守っていこうということ。要するにコミュニティサービスです。まちづくりに関しても、自

分たちの意見をちゃんと町に反映させていく。ですから、いかに仲間と協働していくかということが大切なん

です。自分たちの発案によって、自分たちの創意で町をつくっていく。その中に町の人たちを巻き込んでいく。

そういう手法がこれから日本でも出来ないかなと思ってます。それを運営をしていくためにはオープンに、コ

ンサートをして入場料を取ったり、結婚式をしたり、いろんなイベントを自然の中でやってみませんかという

提案です。この本に具体的な取り組みが書かれています。

 

 

結局何が大切なのかというと、「地域環境」と言いますが、私たちは自然との関係、社会との関係、また自分

自身のありようという関係の中で暮らしているのですが、この関係性をもう一度考えることが大事なのかなと

思います。そういう関係性から切り離された環境について、他人事として話をするのではなく、自分の事とし

てとらえて、どう行動に結びつけられるのかということ。そうするとこれは、地域の中で活動していくという

ことなんだろうなと思います。どう地域に関わっていけるのか。その中で、地域に対する価値観だったり、態

度が形成されていく。

このことをこれまでのエコセミナーで、小澤先生は関係性の取り直しなんだよとおっしゃっていましたし、川

嶋さんはコミュニケーションという言い方でお話してくれました。山口さんは関係性を「ずらす」ことだった

り、「共異性」という言葉で表現していたのかなあと思います。そういうことが地域の中で起こっていくとい

うことなんですね。

 

みんなで作るネイチャーセンターの哲学は、今までの「自然を守る」ことから「自然と共に暮らす」こと。

「自然を知る」ことから「自然に気づく」こと。自然体験は「特別な体験」ではなく、「日常の生活」として

自然と関わる状況がつくれないだろうかということ。そういうことを「ネイチャーセンター」という言葉の中

で表現しているのだと思います。

私たちは、自然を「体験」しないと関われないもののように遠ざけてしまいましたよね。同じように障害を持

つ人や特別なニーズを持つ人のことも、学校の体験学習の中で知ろうということではないはずですよね。本当

は同じコミュニティーの中で、日常のつきあいとしてどう接していけばいいのかということを体得していくも

のなんですが、あまりにもそのことを置き去りにし過ぎてしまったと思います。そんな、今までの関係性を変

えていくということがネイチャーセンターの大きな役割だと思いますし、そのためには行政が作るネイチャー

センターではなく、私たちが主体的につくっていくことが必要だと思っています。

 

まとめになりますが、私たちはいろんな命に囲まれ、仲間に囲まれ、共に過ごす時間と空間を共有しています。

時間と空間を掛け合わせると「場」が生まれますが、その場を共にしていくのがコミュニティですね。その中

で、関係性をもう一度構築していく。そんな仕掛けとしてネイチャーセンターが機能していかないかなと思っ

ています。それを環境教育と呼んだり、まちづくりと呼んだりするかわかりませんが、私たちのミッションは、

環境教育とまちづくりを通してコミュニティをデザインすること、それを持続可能な社会づくりにつなげてい

くことです。

そういった時に、環境教育の意味合いというのは、何かを教えるんじゃなくて、みんなと一緒に地域の環境に

関わりながら、お互いに学びあっていく。そういう学びの関係性も変えていかないとダメなんじゃないかなと

思っています。それがまさに「エコロジカルコミュニティー」ということだと思います。地域へのアイデンテ

ィティーや郷土愛というのはそんな関係性の中から生まれてくるもので、道徳として上から教えるものじゃな

いだろうと。今のままの環境教育をやり続けていても、発展性がないように思っています。この核になるとこ

ろが、建物の作り方ではなく、関係性の再構築のためのきっかけとして、地域に根ざしたネイチャーセンター

をつくっていこうということなんですね。

 

 

* * *

 

 

2013年の5月に、シボロネイチャーセンターの創設者で、「ネイチャーセンターブック」の著者であるエヴァンス夫妻をテキサスから日本へ招き、札幌と京都の2カ所で「地域に根ざしたネイチャーセンターの活かし方・育て方」と題したワークショップを行いました。

 

 

 

 

また、このようなネイチャーセンターを地元の当別町川下地区にもつくろうと、地域の方々や外から来た方も巻き込んで少しずつ進めています。農業や食など地域のランドスケープを見つめ直し、その魅力を自分たちの感性で掘り起こしていく、コミュニティデザインのプロジェクトです。

 

 

 

 

* * *

 

主催:北海道 / 企画・運営:NPO法人 当別エコロジカルコミュニティー

後援:(公財)北海道環境財団 / 協力:(公財)さっぽろ青少年女性活動協会

bottom of page