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環境の村エコサロンは、1つのテーマに集い、集まった方々が環境のことを語り合う場所。

毎回違ったテーマでゲストをお招きし、それをもとに参加者同士が交流を図るサロン形式の場です。

2013

環境の村エコサロン2012

★第2回「スローフードがつなぐ、食と環境」

 

日 程:2013/2/13(水)

​場 所:Event Space EDiT

ゲスト:湯浅 優子さん(スローフード・フレンズ北海道リーダー)

     塚田 宏幸さん(BARCOM Sapporo シェフ)

あまり聞き慣れないスローフードという言葉。

イタリアで生まれたこの理念は、ゆっくり食べて健康になろう、ということではなく、、食を通してその土地の伝統や文化を見直し、生活の質の向上を目指す運動です。食べ物がどこからきて、どのように世界に影響を与えているのかを、食だけではなく農業や文化を含んだ視点から多くの人びとが気付き、共に幸せな未来を気付いていくことを目的としています。

スローフードは、世界中に広がる国際的なNPOでもあるのです。

 

今回は「スローフードがつなぐ、食と環境」と題して、スローフードフレンズ北海道のリーダーである湯浅優子さん、またスローフードの理念に基づいて、北海道産の食材にこだわったバルを営んでいるBARCOM Sapporoのシェフ、塚田宏幸さんにお越しいただきました。

2人のお話から、シンプルで奥が深いスローフードの世界を覗いてみましょう。

 

 

 

食を通して、自分の地域の自然や環境を見つめること

塚田さんは、札幌時計台からほど近い場所で、立ち飲みワインバルスタイルの飲食店「BARCOM Sapporo」(バルコ札幌)を経営しています。

BARCOM Sapporoでは、お客さんからシェフ、生産者までも一緒になって、にぎやかで楽しい食卓を提案しています。というのも、なるべく地元の食材を使った料理を提供しながら、札幌に住む人たちには自宅と会社以外のもうひとつの場所として、札幌を訪れた人には北海道の食材が集まる入り口として、みんなが集まれる場所というコンセプトでバルを営んでいるのです。

また、お客さんや生産者とのコミュニケーションを大切にしていて、畑を借りてスタッフ自身で農家の苦労を一緒に味わったり、「生産者トーク」と題して生産者の方をお店に呼んで、お話や料理を振る舞ったりしています。お正月になるとお餅つきをしながら、スタッフや生産者、お客さんまでもが一緒に厨房に入って、みんなでつくってみんなで食べています。また、普段からもスタッフとお客さんが立ち話する場面をよく目にする場所でもあります。

BARCOM Sapporoでは、アイヌの食文化や知恵、地域の生活や風習を取り入れた料理も提供しています。冷蔵庫がない時代の保存方法はどうだろうかと考えたり、当時の郷土料理をアレンジしたりすること。いろいろな地域の人たちとの交流を通して、その土地の食文化を学んでいくこと。それはとてもスローフードなことで、自分の地域の自然や環境を見つめながら料理を作っていくということでもあります。

 

 

 

 

 

 

 

みんなで一緒に“おいしく”食べよう

湯浅さんはスローフードフレンズ北海道のリーダーとして活動されている傍ら、普段は十勝の新得町で、酪農とともにファームイン(農家民宿)「つっちゃんと優子の牧場のへや」を営んでします。

長年北海道の大自然で酪農を営みながら、そのあり方や周囲の環境の変化を痛切に感じてきたと言います。

 

 

 

 

 

農村の中にも近代化や都市化が進み、小さな農家はやめるしかなく、農家の人口はどんどん減っています。そして大規模化がますます進み、農地だけを拡大していくと、地域の人たちのつながりはどんどん薄れていってしまいます。地域というのは、子どもがいて、若者がいて、中堅どころもお年寄りもいて、いろんな人が入り交じってできている。湯浅さんは大規模で工業化する農業だけでは行き詰まってしまうと感じ、同じ危機感を持つ仲間とともに、ファームインやスローフードの取り組みを始めました。

ファームインの取り組みは、都市の人たちが自由に農村に来れる環境を作るということ。お客さんも一緒になって農家の暮らしをしてもらい、食卓にもちゃんと産地と生産者の顔がわかるものが並びます。それは特別な「農家体験」ではなくて、当たりまえな「暮らしのおすそわけ」なのです。

 

食や環境の問題は、ひとつひとつがとても大きな問題ですが、そのことだけを考えていると周りがわからなくなってしまいます。大切なのはそれらを通して感性を育てること。おいしいものを食べた時に、「おいしい。」と言える感性。美しい森の中に行ったら、「なんて気持ちいいんだろう。」と感じる心。そういった感性をもとに、いろんな人がつながることが必要です。

都市の中で食の豊かさを見つけるのは難しいことです。仕事や時間的にも食べものを作る余裕はないし、環境的にも作物がおいしく育つ豊かな自然は遠い。それでも、農村で暮らす人たちとつながることは出来ます。そんなふうに、考えや思いを伝え合い、様々な分野の人がつながり合うことが大切だと湯浅さんは言います。

生産者や消費者と僕ら料理人と、あんまり垣根を感じないで、皆さんと楽しい食文化をつくっていけたらいいなって思っています。日本はちょっと成長しすぎていて、もう少し経済の成長をやめて心を裕福にしていきたいなと思って、いろんな活動に取り組んでいます。

「食が危ない」っていうことを田舎に住んでる私が感じました。これから先、私たちの食はどうなっていくんだろう。食べものがどう壊されていくんだろう。そして、私たちの子どもがたちが、全う(まっとう)に食べられるんだろうか。

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おいしいものを食べるっていうよりも、おいしく食べようって。きっとテーブルで一緒に何かを食べ始めた時、心が開くというか、通い合う。そこから始めて、次のものに進んでいく。

スローフードっていいですよ。おしゃれで楽しくおいしく。でも、そこにはしっかりと哲学を持った生き方みたいなものが生まれてくる。是非一度、また皆さんと一緒に食卓を囲みたいと思います。

 

 

 

スローフードがテーマということで、当日は塚田シェフから「干しかぼちゃのプリン」と「黒豆茶」が振る舞われました。昭和の初めの頃は冷蔵庫がなかったため、北海道でもかぼちゃを干して食べていたんだとか。

スローでおいしい食べものと、塚田さんと湯浅さんの優しく真摯なお話に、会場はあたたかい雰囲気に包まれていました。

主催:北海道

企画・運営:NPO法人 当別エコロジカルコミュニティー

後援:(公財)北海道環境財団  協力:(株)アルバイト情報社

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