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-  ネイチャーセンターブック

ブレント・エヴァンス/キャロリン・チップマン−エヴァンス=著

山本 幹彦=監訳  田畑 世良=訳

2012年/人文書院 290ページ

「ネイチャーセンター あなたのまちの自然を守り楽しむために」(原題:The Nature Center Book : How to Create and Nurture a Nature Center in Your Community / 1998年)は、日本語訳版として20123月に出版されました。原著の著者は、アメリカ・テキサス州でシボロ・ネイチャーセンターを運営しているブレントさん、キャロリンさんのエヴァンスご夫妻です。

アメリカの書店でこの本を見つけ、著者のお二人にコンタクトを取り、日本語訳での出版が実現しました。今回は、監訳というかたちで日本語での出版に関わりました。

 

ネイチャーセンターとは、ビジターセンターのような、地域の生態系の展示やレクリエーションのための「施設」という意味合いだけではありません。文字どおり、地域の自然やコミュニティーの「中心」(center)を表します。地域の自然を通して、人々が集まり土地や文化に関わる、地域に根ざした「拠点」なのです。

もちろん、施設やトレイル、公園などを持つ大規模なものもありますが、それがなくても立派なネイチャーセンターは成り立つと、2人はこの本で述べています。

 

シボロネイチャーセンターは、年間150もの自然体験プログラムを実施し、地元の学校や家族連れ、障害を持った子どもたちなど多くの参加者を受け入れています。また音楽コンサートやファーマーズ・マーケットなど、地域にひらかれたイベントも行われていて、そこには自然を愛するナチュラリストから、気軽に余暇を楽しみたい人たちまで、様々な人々が集まっています。そうやって、地域の自然やその土地と関わるきっかけを提供しているのです。

NPOとして運営しているこのネイチャーセンターは、ボランティアやインターンによる活動、個人や企業からの寄付に支えられながら、同時に行政や学校、生物学者、ランドスケープデザイナーなど、様々な人たちとの関わりによって成り立っています。

 

この本では、全米にあるネイチャーセンターのいくつかの多彩な事例を紹介しながら、そのプログラムや地域との関わり、実際の作り方の手順や運営方法までを紹介しています。

展示ホールやギフトショップを持ち、お祭りやコンサートが開かれるような大きなものから、緑の少ない砂漠の中にたたずむ小さな小屋のようなネイチャーセンターまで、様々な事例が紹介されています。TECの活動拠点である北海道の道民の森も掲載されています。

 

1998年の原著の出版からすでに長い時間が経ちましたが、日本版に新たなテキストや事例を加えつつ、そのコンセプトや地域の自然との関わり方は、環境教育やまちづくりだけでなく、これからの暮らし方を考えるためにも大きな光を与えてくれるものだと思います。

 

 

 

 

書店、インターネット通販にてお求めください。Amazon、楽天などで取り扱っています。(¥2,800+税)

 

<目次>

1.ネイチャーセンター(シボロ・ネイチャーセンター物語/ネイチャーセンター設立/どうしてネイチャーセンターなの?/役割/プログラム/施設)

 

2.ネイチャーセンター作りの手順(準備/サポート/組織/コミュニティ作り/お金は大切ー細部に気を配ること/土地の管理/プランニングー夢を実現するために/希望)

 

 

<著者>

        Carolyn Chipman Evans  -  キャロリン・チップマン—エヴァンスは、テキサス州シボロネイチャーセンターの創設者で          あり、事務局長。15年にわたり彼女と夫ブレントは、ボルン市と共同してこの公園を守る努力を続けてきた。彼女は教育           を通して自然を保護することを目的としたNPO法人、「シボロ自然友の会」を創設し、シボロネイチャーセンターの代表と          して、ネイチャーセンター開発に関わるすべての役職を経験。ナチュラリスト、ボランティア・コーディネーター、教育ト          レーナー、広報コーディネーター、プログラム・デザイナー、ニュースレターの編集者、ディスプレイ・デザイナー、建設監督、開発ディレクター、経営者といった役割をこなしてきた。

キャロリンはシボロ湿原の土地トラスト団体の創設にも尽力。現在、ボルン市とケンダル郡との共同で緑道や緑地のマスタープラン作り、シボロ・ネイチャーセンターの拡張候補地の保全、センターの教育施設の拡充を含む自然保護活動に関わっている。

ネイチャーセンターの創設を通じて、自然保護局、テキサス州公園・野生生物局、公益法人、企業、大学、スカウト連盟、学校、クラブ、その他多くの組織や個人と関わり合いながらコミュニティーを活き活きさせる役割を果たした。

 

「私は今暮らしている丘陵地帯の牧場の6代目です。ここ20年の間、森の中に住み、馬、ヤギ、ネコ、イヌ、アヒル、ニワトリのほか、いつも夢見ていたたくさんの動物たちを飼って暮らしています。隣人にはアライグマやアルマジロがいます。私は街で育ったので、自然な場所に対する畏敬の念を失ったことはありません。

私の子どもたちは、私がずっと憧れていた子ども時代を送ることができました。しかし、自分の子どものために森の家を建てるだけでは不十分でした。私はすべての子どもたちに、小川で遊び、頭上をアオサギが飛んでいく様子を見る機会を与えたかったのです。私は自然に惚れ込み、すべての世代にそれを体験するチャンスがあって欲しいのです。」

 

 

        Brent Evans  -  ブレント・エヴァンスは公認のソーシャル・ワーカーで、33年もの間、家族カウンセリングや、まちづ          くりに関わる。教育トレーナー、エンターテイナー、シボロ自然保護委員会の運営代表として長年活動的に自然保護に取り          組み、精神病院の青年患者のためのSEEDプログラム(Self-Esteem though Ecological Dynamics 環境とのふれあいを通じて          自尊心を育むプログラム)や地域の老人介護施設のための園芸プログラム、SAGESenior Activity for the Good Earth 地球          のための高齢者プログラム)を作ってきた。しばしば「グリーン・マン」や「ゴミ・マン」に変身する。グリーン・マンの塗り絵は彼の発案によるもの。

 

「私は、ネイチャーセンターを創設するのに、ナチュラリストである必要はないという生きた証です。『植物不適応』と自分では呼ぶ、ある種の学習障害をもっているとさえ思っています。というのも、植物の名前を覚えることが苦手なのです。自然を心から楽しんでいるのですが、専門用語はとにかく頭に入らないのです。この点については、素晴らしい秀才に囲まれていましたから、自分のハンディにはならずにすみました。私はシエラ山中で生まれ育ち、いつも自然に惹かれてきました。キャロリンと連れ添ってから、古い家を森の中に移築し、そこで3年間電気のない暮らしを送りました。子どもたちを森の中で育てることは素晴らしい経験でした。のちに電話や電気、テレビ、インターネットのある20世紀の世界へ移り住みました。子どもと保護者のプライベートカウンセリングという自分の仕事をとても気に入っています。しかし、私たちの人生に美を与え、魂を根づかせ、楽しませてくれたのは自然です。あなたもネイチャーセンターに関わりはじめたら、ランディ・ニューマンが言ったように、『サルの木にいるサルのように幸せになれます』」

 

 

 

 

 

 

2012年の5月に著者のおふたりを日本にお呼びし、札幌と京都でそれぞれゲストを交えたワークショップを行いました。また、北京師範大学のお招きで中国にも一緒に訪問し、北京で交流会を行いました。現在は中国語での翻訳・出版が決まっています。

 

 

 

 

​TECでは、この本のコンセプトをもとに、事務所のある当別町川下地区での地域に根ざしたネイチャーセンタープロジェクトを進めてます。

 

 

『ネイチャーセンター  あなたのまちの自然を守り楽しむために

The Nature Center Book

How to Create and Nurture a Nature Center in Your Comminity

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